いつもあすかコラムをご覧いただきありがとうございます。本年もどうぞよろしくお願い致します。
今年も飛鳥薬局は薬学生の皆様と地域住民の方々に薬についてや飛鳥薬局について知っていただけるよう、広報委員会のメンバーで定期的にあすかコラムを更新してまいります。2022年、最初のあすかコラムは漢方薬についてです。
1. はじめに
薬剤師として調剤薬局で働いていると、漢方薬を患者さんにお渡しする機会が多くあります。
薬局では、患者さんの症状に合わせて様々な漢方薬が処方されます。
今回はそんな漢方薬について、お話ししたいと思います。
2. 漢方薬とは
漢方薬とは、中国が起源で、日本で独自に発展した漢方医学で使われる薬のことです。
植物や動物、鉱物等の薬効となる生薬を基本的には2つ以上組み合わせて作られます。
2012年の改正により厚生労働省から承認を受けた漢方薬(一般用漢方製剤)は294処方ありますが、全てが医療保険で賄われる訳ではありません。医療保険の適応がある漢方薬(医療用漢方製剤)は148処方となります。
3. 空腹時に服用する理由
漢方薬は空腹時の服用が推奨されています。これには大きく分けて2つの理由があります。
1つは吸収を高めることです。漢方薬に含まれる配糖体成分が腸内細菌の酵素により糖部分が外れないと吸収されないため、競合する食べ物がない方が良いとされるからです。
もう1つは副作用を軽減するためです。麻黄の主成分であるエフェドリンは、そのままの形態で吸収されますが、その吸収率には胃内のpHが関与します。食後(pHが高まっている状態)に服用すると速やかに吸収され不眠、動悸等の副作用が出やすくなりますが、食前(pHが低い状態)に服用すれば吸収が緩やかで安全性が高まります。
ただし、味や香りが苦手で食前または食間に服用すると気分が悪くなったり、食欲が低下したりする場合や、そもそも飲み忘れてしまった場合は食後でも構わないという指示が出されることもあります。
4. 飲みやすくする工夫
苦味が強く飲みにくいことで知られる漢方薬ですが、飲ませ方は様々です。メーカーでは、
・あらかじめ水を口に含み、舌に漢方薬が残らないようにする。
・オブラートに包み服用する。
と紹介しています。
乳幼児には水飴やハチミツ(ただし1歳未満には与えてはいけません ※2020年10月号参照 )と混ぜて飲ませたり、お湯に溶かして砂糖を加えて飲ませたりすることを推奨しています。ミルク等に混ぜると、ミルク嫌いの原因になることもありますので注意が必要です。
また、コーヒーや緑茶等も効果に影響を与える可能性があるため推奨されていません。
5.メーカーによって含有量が違う?
漢方薬はメーカーによって若干成分量が異なります。これは、日本薬局方が定める処方パターンが複数存在するためです。葛根湯では、以下のように4種類のパターンが存在します。
生薬 |
メーカー① | メーカー② | メーカー③ | メーカー④ |
葛根 | 8.0g | 4.0g | 4.0g | 4.0g |
麻黄 | 4.0g | 4.0g | 3.0g | 3.0g |
大棗 | 4.0g | 3.0g | 3.0g | 3.0g |
桂皮 | 3.0g | 2.0g | 2.0g | 2.0g |
芍薬 | 3.0g | 2.0g | 2.0g | 2.0g |
甘草 | 2.0g | 2.0g | 2.0g | 2.0g |
生姜 | 1.0g | 1.0g | 1.0g | 2.0g |
また、それぞれの添付文書に記載されている効能効果にも若干違いがあります。
メーカー① | 感冒、鼻かぜ、頭痛、肩こり、筋肉痛、手や肩の痛み |
メーカー②
|
頭痛、発熱、悪寒がして、自然発汗がなく、項、肩、背などがこるもの、あるいは下痢するもの。感冒、鼻かぜ、蓄膿症、扁桃腺炎、結膜炎、乳腺炎、湿疹、蕁麻疹、肩こり、神経痛、偏頭痛 |
メーカー④
|
自然発汗がなく頭痛、発熱、悪寒、肩こり等を伴う比較的体力のあるものの次の諸症: 感冒、鼻かぜ、熱性疾患の初期、炎症性疾患(結膜炎、角膜炎、中耳炎、扁桃腺炎、乳腺炎、リンパ腺炎)、肩こり、上半身の神経痛、じんましん |
全てのメーカーに共通するのは、頭痛や肩こりといった症状に対して使用するところです。
また、含有量に違いがあっても薬効に大きな違いはないと言われています。葛根が2倍入っているメーカー①の葛根湯が最も効果が良いという訳ではありませんので、注意してください。
6. 即効性のある漢方薬
漢方薬は継続して服用することにより効果を発揮するものというイメージがあり、確かにそのイメージ通りのものが多くあります。しかし、漢方薬の中にも即効性を期待して服用するものも存在します。
代表的なものとして、初期のインフルエンザにも適応を持つ麻黄湯があります。
その他にも、こむら返りにも使われることが多い芍薬甘草湯、胃もたれや胃痛、腹部膨満感に効く六君子湯や大建中湯、安中散等は漢方薬の中でも薬効が早く出ることが知られています。
7. 注意が必要な生薬
漢方薬には副作用がないというイメージを持たれる患者さんもいらっしゃいます。ですが「3. 空腹時に服用する理由」で触れたように、漢方薬の中にも副作用に注意を要するものが含まれます。
以下の表に代表的な生薬の副作用をまとめました。今患者さんに見られる症状が副作用ではないか、注意しながらお話を聞くようにしましょう。
生薬名 (含有成分) | 主な副作用 | 生薬を含有する代表的な漢方薬 |
麻黄 (エフェドリン) | 不眠、動悸、血圧上昇、発汗過多 | 麻黄湯、葛根湯 |
大黄 (センノシド) | 下痢、腹痛 | 大黄甘草湯 |
甘草 (グリチルリチン) | 浮腫、高血圧、偽アルドステロン症 (低K血症) | 芍薬甘草湯、小青竜湯 |
附子 (アコニチン) | 嘔気、舌の痺れ、動悸 | 真武湯、八味地黄丸 |
8. まとめ
今回は漢方薬のちょっとした雑学についてお話しさせていただきました。
薬剤師国家試験を無事合格した後は、認定薬剤師制度の中に「漢方薬・生薬認定薬剤師」もございますので、目標の1つとしてはいかがでしょうか?
飛鳥薬局では認定薬剤師の取得も応援しています。興味を持たれた方は、是非会社説明会、インターンシップにご参加ください。
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