これからの薬剤師の役割 ~施設在宅編~
皆さん、こんにちは。
今月のあすかコラムは先月に引き続き、在宅医療についてご紹介します。
その中でも、今回は施設在宅にスポットをあててお伝えしていきます。
1.施設在宅の特徴と実例
①詳しい既往歴や検査値などのデータが豊富
在宅医療の場合、医師からの診療情報の提供があるため、より良い治療を提案することができます。
抗精神病薬のクエチアピンやオランザピンは糖尿病の既往歴のある患者には禁忌となっています。
高齢者のHbA1cのコントロール目標値は通常よりも高めに設定されているため、食事量が減り、A1cが正常域になると糖尿病薬を中止している場合もあります。
これは診療情報提供書に記載されている既往歴を確認することで、禁忌薬の服用を未然に防ぐことが可能となります。
②病態に対する薬剤禁忌をチェックしやすい
閉経後骨粗鬆症の治療を行っている患者のADL(人が日常生活を送るために必要な基本的行動)が急激に低下し、寝たきりになっていることが分かりました。
SERM剤(ラロキシフェン、バゼドキシフェン等)は長期不動による静脈血栓症のリスクが上昇するため禁忌となります。
この場合は、SEAM剤の服用中止の提案を行う必要があります。
③服用後のフォローがしやすい
睡眠導入剤では服用開始後、日中まで傾眠があって食事が摂れていないことや転倒はないか、利尿剤では脱水症状やトイレが間に合わなくなっていないかなどを確認する必要があります。
確認できた症状を医師に情報提供することで、薬剤の減量や次回診察までの服用中止などの指示が出ることもあります。
服薬フォローアップは2020年の9月より薬剤師の義務となりました。外来では電話などを利用し、フォローアップすることが多いです。在宅医療では実際に患者の状態を確認に行くことで、QOL(自分らしい生活、満足した生活)の維持や薬剤の適正使用に役立てています。
④介護施設のスタッフから頼りにされる
介護施設のスタッフから患者のADLの変化や食事量の変化について相談されることがあります。
薬剤師は現在の治療と副作用のリスク評価を行ったり、栄養剤の追加提案なども行います。
その際に、不足分のカロリーを補うためには1日あたり何本の栄養剤が必要なのかを計算したり、液体だとむせてしまう方にはゼリータイプのものを提案したり、医薬品の栄養剤だけでなく、場合によっては市販の栄養剤を紹介することもあります。
2.在宅医療で必要なことは
①薬学的知識と経験、情報の検索力が必要
往診時に医師から「この薬はどうですか」「何かよさそうな薬はありますか」など、薬剤師に質問してくれることがよくあります。その際に、すぐに返答できる薬学的な知識や分からない場合はすぐに調べられる検索力が重要となってきます。
飛鳥薬局では、薬剤師1人に1台タブレット端末を貸し出しているため、添付文書や治療ガイドライン等の検索をその場で、すぐに行うことができます。
なお、このタブレット端末で薬歴記載が行えるため、非常に便利です。
②事前の情報収集が必要
医師や介護施設のスタッフなどからの相談に応えたり、処方提案を行うためには、時系列的に患者の体調変化をしっかり把握しておく必要があります。事前準備は入念に行いましょう。
3.施設在宅の流れ
①介護施設に入居されている50名の患者をAグループ、Bグループと2つに分けて、隔週で往診しています。
(Aグループが1週目と3週目、Bグループが2週目と4週目)
②1週間前に次回のグループの屯服薬や外用薬の残薬を確認し、次回必要や休薬かを判断する。
その結果を医師へ情報提供する。
③往診訪問日に介護施設のスタッフよりバイタルや患者の様子(症状の急変など)についての情報の申し送りを受ける。
④介護施設のスタッフから得た情報を基に、往診時に医師への情報提供、処方提案を行う。
⑤往診終了後に、介護施設スタッフへ処方変更の内容について伝える。
⑥すぐに服用が必要な薬は当日、定期の薬は別日に配薬と服薬指導を行う。
⑦次回までに居宅報告書を作成し、ケアマネージャーと医師へお渡しする。
< 施設訪問時の情報提供表 >
処方提案や残薬管理に使用しています。
4.まとめ
いかがだったでしょうか。
薬剤師の仕事は対物業務から対人業務へと徐々にシフトし、地域社会においての健康相談役として期待されています。
今後は超高齢化社会となり、介護施設や自宅での看取りまで対応することが増えていくと予想されます。
時代の流れに置いていかれないためにも薬剤師は日々の自己研鑽が必要です。
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