皆さんこんにちは。広報委員の大川です。
昨年11月のコラムで調剤報酬点数についてお伝えしましたが、今回はその第2弾です。
あすかコラム6月号では、「嚥下困難者用製剤加算」についてお伝えいたします。
嚥下困難者用製剤加算
嚥下困難者に係る調剤について、当該患者の心身の特性に応じた剤形に製剤して調剤した場合は、調剤料に80点を加算する。
1.嚥下困難とは
まず、嚥下困難とは水や食べ物が飲み込みにくかったり、飲み込む時にむせたり、咳き込んでしまったりする状態のことを言います。水や食べ物が肺の方に行ってしまうことを誤嚥(ごえん)と言い、これらは病気や加齢に伴って起こることが多いです。
2.嚥下困難者用製剤加算の算定要件
嚥下困難者用製剤加算は、嚥下障害等があって、市販されている剤形では薬剤の服用が困難な患者に対し、医師の了解を得た上で錠剤を砕く等剤形を加工した後調剤を行うことを評価するものである。
〇剤形の加工は、薬剤の性質、製剤の特徴等についての薬学的な知識に基づいて行わなければならない
〇嚥下困難者用製剤加算は、処方箋受付1回につき1回算定できる
〇1剤として取り扱われる薬剤について、自家製剤加算は併算定できず、また、剤形を加工したものを用いて他の薬剤と計量混合した場合には、計量混合調剤加算を併算定することはできない
〇嚥下困難者用製剤加算を算定した場合においては、一包化加算は算定できない
〇薬剤師が剤形の加工の必要を認め、医師の了解を得た後、剤形の加工を行った場合はその旨調剤録等に記載する。
(厚生労働省 調剤報酬点数表に関する事項より抜粋)
嚥下困難者用の工夫とは、錠剤やカプセル剤の服用が難しい患者さんに対して錠剤を粉砕したり、カプセルを外して中の散剤を取り出したり(脱カプセル)することを指します。
処方箋に記載されている薬のすべてが、患者さんが服用しやすいように工夫されている必要があり、一部だけを粉砕や脱カプセルしただけでは算定することはできません。
また、剤形の加工は、薬剤の性質、製剤の特徴等についての薬学的な知識に基づいて行わなければならないと記載されており、粉砕してはならない医薬品を粉砕してお渡しした場合には算定することはできません。
・ラベプラゾールNa錠の粉砕指示あり⇒腸溶性製剤のため、粉砕できない この場合は算定不可
これは疑義照会を行い、他の薬への変更を依頼すべき内容となります。
◆散剤が市販されている場合◆
市販されている剤形では薬剤の服用が困難な患者に対しと記載されていることから、散剤が市販されている場合は算定することはできない。
・カルバマゼピン錠の粉砕指示あり⇒カルバマゼピン細粒が販売されている この場合算定不可
◆頓服薬のみの処方である場合◆
嚥下困難者用製剤加算は内服薬が対象であり、頓服薬のみの処方である場合は自家製剤加算(90点)を算定しなければならない。
但し、処方箋に内服薬と頓服薬が一緒に記載されている場合は算定可能です。
◆計量混合加算と同時算定が可能な場合◆
1剤として取り扱われる薬剤について、自家製剤加算は併算定できず、また、剤形を加工したものを用いて他の薬剤と計量混合した場合には、計量混合調剤加算を併算定することはできない。嚥下困難者用製剤加算を算定した場合においては、一包化加算は算定できない。とそれぞれ記載があることから、基本的には嚥下困難者用製剤加算と同時に他の加算(自家製剤加算、一包化加算等)を算定することはできません。
但し、計量混合加算については例外が存在します。
剤形を加工したものを用いて他の薬剤と計量混合した場合には計量混合加算を併算定することはできないと記載されているところがポイントになります。
これは粉砕をした薬剤を混合することなく、散剤のみの計量混合を行った場合は算定可能となります。
処方1 A錠 1錠 1日1回夕食後 28日分
処方2 B散 1g
C細粒 1g 1日1回寝る前 28日分
※処方1は粉砕の指示、処方2は混合の指示あり
まず、処方1のA錠は医師の指示があるため、粉砕します。
服用時点が他の薬剤とは異なるので、一緒に混合するものはなく単独で分包します。
処方2は医師より混合の指示があるため、2つの散剤を混合します。
今回、剤形を加工したもの(A錠)を他の薬剤(B散またはC細粒)と一緒に混合していないので、計量混合加算も算定が可能です。また、全てが散剤となり、服用がしやすくなったため、嚥下困難者用製剤加算の算定も可能となりました。
3.嚥下困難者用製剤加算についてのまとめ
・嚥下困難等により、患者さんが薬を飲むことができない
・医師から指示または医師の了解を得る必要がある
・薬学的知識に基づいて行うこと
・薬剤が1つだけであっても算定は可能
・処方箋受付1回につき算定する
・一部のみの加工ではないこと
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